あるうっすら寒い日のできごと。

 それは、誰かの気まぐれか。
 逃げる猫の執念か。
 出会うはずの無い者たちがふと、出会ってしまったそのとき。
 舞台の登場人物(?)となってしまった彼らは。
 …………いったい、どうするのだろうね。



「びっ!?」

 それは突然やってきた。
 真冬ほど寒くはないがじっとしているには寒いこの日。
 川辺にいい感じの陽だまりを見つけうつらうつらとしていた鳥。
 ――― 鳥と言っても並みのサイズではなく。
 人間の大人がしゃがんだくらいの大きさ。
 似ている動物を探せと言われたら『アヒルとガチョウの間』とでもしておこうか。
 その大きな鳥の背中に突然何かが突っ込んできた。
 驚いた鳥は一応驚き慌てるが、元来それほど気にする性格ではないようで再びうつらうつらし始めた。
 背中に飛び込んだ『何か』はそのままに。

「オルハ、無イ?」
「び?」

 大きな鳥の……この『大きな鳥』といちいち言うのも何だ。
 鳴き声が一貫しているから便宜的に『ビィ』としておこうか。
 ビィは女の子に声をかけられた。
 目を開けると朱橙の瞳にとがった耳、クリームブロンドの髪に微妙に無表情な女の子だ。

「探ス。無イ?」
「…び?」

 疑問符を飛ばすビィに構いもせず翼を引っ張ったり頭によじ登ったり足の下をくぐったりするユズハ。
 そして。
 とうとう『それ』は発見されてしまった。

「…うそつキはタヌキの始マリ」
「びびびっ!?」

 翼の影から引きずり出されたのは尻尾を天敵に捕まれたぷるぷる震える白い猫。
 ……なぜか顔にマジックで眼鏡が描かれているが。
 じとん、とユズハに見据えられ、ビィもぷるぷる震える。
 ……………………………鳥はどうやったって狸にならないだろう、と思うが。

「どくぞよ」

 たぬきタヌキと焦りまくるビィをまたも構いもせず、ユズハは背中によじ登る。
 もぞもぞと。
 もぞもぞと。
 ユズハはビィの背中の上で立ち上がったり転がったり落ちたり憮然としたり頭の上で景色を眺めたりしている。
 その間、ビィは「何かする?」となぜか期待げ。
 …オルハは逃げることもできずただただ引き摺られている。

「うむ」

 ようやくユズハが落ち着いたのはビィの首の付け根付近。
 背中にまたがり、乗馬のような状態だ。

  ひぅぅっ

 たかが陽だまり、されど陽だまり。
 やっぱり陽だまり、川辺の陽だまり。
 緩衝物が無いために冷たい風が直にあたる。

 ぎゅっ☆
「ぅびっ!?」

 何かを感じたユズハ、オルハを咥えそれまでしていた赤いマフラーをほどいてビィに巻いた。
 …ちょっと絞めすぎたのはご愛嬌。
 もがくと緩み、ビィは息を吐く。
 片方だけやけに長いマフラーは、ともすれば馬の手綱のようにも見える。

「…………余は満足ジャ」

 翼にはさまれ居心地がいいのかユズハはその場でおとなしくなる。
 いまだ踏まれたままのオルハも空間の暖かさに睡魔に襲われ――――





「ってな話があったんじゃないかな」
「よくそこまであの様子から話を膨らませられるね、姉さん」

 姉弟の前には、とろとろと昼寝をする1匹と1羽と1人の姿。

「それよりも先にどうしてあの見たことも無い鳥が城の前で半精霊と落書きされた猫を乗せて寝こけているかってのを追究すべきなんじゃないの?」

 あまりのほのぼのに衛兵もなごんでしまう正門前。
 嵐の前の静けさとも言うべきの。
 ―――――― あるうっすら寒い日の珍事。
○後書き
 桐生さん、15000HITおめでとうございますっv
 …こんなに短くていいのかしら(汗)
 ひたすらほのほのとした話を目指してみました。
 こそっとアセルスさんとか登場してもらっちゃったし…。
 こんなのでよろしければ受け取ってやってくださいvv
 ではでは、今後の桐生さんとHPの発展を祈りつつ、みていでございました。多謝♪

            ※ ※ ※

 みていさん、ありがとうございますっ。お祝いにどんなのがいいですかと訊かれて、ずうずうしくも異次元をリクエストしてしまった私ですがっ、こんなほのぼのしたお話をいただけて幸せですっっvv
 異次元といいますのは、他の作者さんがスレイヤーズ世界で活躍させているオリキャラ同士を共演させようという夢の企画でございます。このお話にでてきた『ビィ』はみていさんの小説に登場する賢いトリさんなのですv みていさんの小説はリンクにあります星光卍会本部または書き殴りさんのところで読むことができますので、ぜひどうぞ♪