【 よろず話 】 (↑旧↓新 ブログに書いていた雑文)
花山院
「晴明に伝えるがよい。師貞がまた頭痛を治してほしいと言っていたとな。今度は前々世の髑髏でも探してもらおう」
笑いながらその男は御簾を降ろし、牛車はその場から去った。
「………玄武、あの人はだれ? 玄武の声が聞こえていたみたいだけど」
彰子が困惑して問うと、隠形している玄武はどうやら頭を抱えているらしかった。
(なんだって市などにおるのだ非常識な………! 迂闊だった………)
「玄武?」
彰子が再び名前を呼ぶと、玄武は沈鬱な面持ちで答えた。
「あれは先の帝だ」
「…………え?」
唖然として彰子が立ちつくす。玄武はくり返した。
「現在はたしか花山院と呼ばれているはずだ」
それは、もしかしなくとも、顔を見られたのはものすごくまずいのではないだろうか。
彰子は蒼白になった。
●先帝、花山院と市でばったり(ありえねえ/笑)。
花山院は晴明とのエピソードがかなり多くておいしい人です。験力もあったらしい。奇人さんだけど。院のくせに身が軽くてあっちこっちふらふらしてます。熊野行ったり市行ったり。
「大鏡」の花山天皇が退位するときに晴明の家の前を通ったエピソードって、式神も登場するけど、少年陰陽師版だとどの式神だったのか勝手に考えてみるのも楽しい(こんな変こと考える人、私以外にいませんか?/爆)。
「ちょっと内裏へ行って様子を見てこい」と言うぐらいだから、移動系の力を持つ白虎か太陰なのは確実な気が。速さなら太陰だけど彼女一人で様子見に行かせるも心配なので、玄武あたりが一緒に行こうとしたのではないかしら(笑)
「さて土御門より東ざまに率ていだし参らせたまふに、晴明が家の前を渡らせたまへば、
みづからの声にて、手をおびたたしく、はたはたと打つなる。
『帝降りさせたまふと見ゆる天変ありつるが、すでになりにけりと見ゆるかな。参りて奏せむ。車に装束せよ。』
と言ふ声を聞かせたまひけむは、さりとも、あはれに思し召しけむかし。
『かつがつ式神ひとり内裏へ参れ。』
と申しければ、目には見えぬものの、戸を押し開けて、御後ろをや見参らせけむ、
『ただいまこれより過ぎさせおはしますめり。』
といらへけるとかや。」
「いま通り過ぎていったわよ」(太陰)
とか(笑)
でも原文は敬語だなあ。天一か太裳かしら(笑)
裏の畑
「昌浩、土の中にね、ときどき蛇をうんとちっちゃくしたような生き物を見るんだけど、あれって何かしら」
「たぶんそれ蚯蚓だろ。見た目はアレだけど、こいつらのいるおかげで野菜とかがよく育つ良い土になるんだ」
「もっくん物知りねえ」
「おうよ、何でも聞いてくれ」
「………彰子さん、つかぬことをお聞きしますが、その生き物をいったいどちらで御覧になられたのでせうか?(汗)」
「裏の畑よ(にっこり)」
「じーさま! 彰子に畑仕事させないよう何とかしてくださいっ(泣)」
「……と、わしに言われてものう(汗)」
●短すぎこの話(笑)
さすがに吉昌パパあたりが止めるでしょうが、彰子が率先してやりはじるめるのも時間の問題だと思う(笑)
そう、ザビの見取り図では安倍邸の裏には畑があるんですよ、畑が。あれ誰が手入れしてるんですか?
露樹でなかったら神将でしょうか(笑)
ん? そうか、神将じゃなくて、畑仕事専用の式をつくってそれにやらせているのかも。
畑つながりで平安時代の野菜について、ちょこっと調べているのですが、そのうちよろずの方で記事にまとめたいです。題して「安倍昌浩節食事情/野菜編」(笑)
カレーに入っている野菜って、ほとんど平安時代の日本に存在しないんですよねぇ、困った(笑)
少年陰陽師 de 和歌
昌浩
「立ち別れ いなばの山のみねに生ふる まつとし聞かば今帰り来む」
(在原行平)
待っているから、必ず帰るよ。
彰子
「思へども身をしわけねば目に見えぬ 心を君にたぐへてぞやる」
(伊香子淳行)
心だけは一緒に。
章子
「逢ふことも今はなき寝の夢ならで いつかは君をまたは見るべき」
(上東門院藤原彰子)
もう、二度と逢うこともない。
晴明
「つひにゆく道とはかねて聞きしかど 昨日今日とは思はざりしを」
(在原業平)
いつか来る天命。
太陰
「吹く風に あつらへつくるものならば このひともとは よぎよと言はまし」
(詠人知らず)
(吹く風に注文をつけることができるならば、この一本の木は避けて吹いてくれ)
無理な相談(笑)。
六合
「しのぶれど 色にいでにけりわが恋は 物や思ふと人のとふまで」
(平兼盛)
………珂神編からは色に出まくり、旦那(笑)。
「心には下行く水の湧き返り 言はで思ふぞ言ふにまされる」
(古今六帖五-2648)
これ超ぴったりだと思いません?(笑)。
風音
「はじめなき夢を夢ともしらずして このをはりにや覚めはてぬべき」
(式子内親王)
最後になって、気づいた。
他キャラは見つかり次第、後ほど(笑)
安倍昌浩節食事情/植物編
13歳という、成長期真っ盛りの安倍昌浩(笑)
平安時代の彼は何を食べていたのでしょーか。
とりあえず魚介類と肉類をのぞいた、植物由来の食べ物を列挙してみました。簡単に、判明している当時の加工法も記載。別に当時この加工法しかなかったというわけではないです。
「よろず話」は私の二次創作の資料メモとしての一面もありますので、役に立つかはわかりませんが、よければ参考にしてください。作中で市で彰子に夜食として買わせるもよし、厨で料理させてもよしです(笑)
【野菜】
《いまでも食べるもの》
〈栽培利用〉 安倍邸の裏の畑に生えているかも?
カブ---根をカブラ、葉をアオナ、種をナタネ。根と葉は漬け物。種は薬用。
サトイモ
サンショウ
シソ---薬用としても。漬け物等。
ショウガ---産地は遠江と越前
セリ---栽培も自生も。
ダイコン---醤漬けなど。
ダイズ---枝豆としても大豆としても。ただしモヤシは薬用だったらしい。
トウガン---糟漬け、醤漬け等
ナス---漬け物など。
ニラ
ネギ
フキ---フキノトウは薬用。葉は野菜。漬け物等。
ミョウガ---汁糟漬けや塩漬け等
キュウリ---当時は薬用。
ニンニク---当時は薬用
ラッキョウ---当時は薬用
ハッカ---当時は薬用
〈自生種利用〉 神将が山から採ってくるかも?
アサツキ---薬用にも。
ゴボウ---当時は薬用。
ジュンサイ
タケノコ
タラ
ツクシ
ヒラタケ---野菜じゃないけど(苦笑)
マツタケ
ムカゴ
ヤマイモ(自然薯)---芋粥の原料。
ワサビ---若狭、越前、丹後、丹波、因幡、飛騨より朝廷に献納。
ワラビ
《いまではあまり食べない》
〈栽培利用〉
アザミ
ウリ---学術的にはメロンの仲間。マクワウリが甘くて、シロウリが漬物に適している。旬は夏。
カキチシャ---レタス・サラダナの仲間。
ギシギシ---別名シブクサ。
ササゲ---マメ科の一年草の大角豆のこと。英語ではカウピー。
タデ---「蓼食う虫も好き好き」のタデ。
ヒシ---実を食べる。菱粉にしたら餅や団子の原料に。
ヒユ---葉を食べる
フユアオイ---種は薬用
ホウキグサ(トンブリ)---当時は薬用
〈自生種利用〉
アカザ
イタドリ---別名スカンポ
ウド
ナズナ
ハコベ
ヨメナ
春の七草
【穀類】
アズキ
アワ
キビ
コメ
ゴマ
ソバ
ヒエ
ムギ
【果実類】
アケビ
アンズ
イチゴ---現在のイチゴとは品種が違う。キイチゴ。
ウメ
カキ---干し柿を削って甘味粉にも。
クリ
グミ
クルミ
クワ
コウジ(柑子)---ミカンのことです。
ザクロ
スモモ
タチバナ---皮を香味として。
ナシ
ナツメ
ビワ
モモ
ヤマモモ
ユズ
カヤの実
トチの実
シイの実
マツの実---私の好物です(爆)
参考資料
『古典文学と野菜』廣瀬忠彦
『日本の野菜』『野菜の日本史』青葉高
『日本食物史』樋口清之
藤原紀香の十二単
テレビで見ましたが、綺麗ですねえ。やはり美人が着ると違います(笑)
恥ずかしながら私も京都に旅行に行ったときに裳唐衣装束を着ましたが、真っ白に塗りたくられたあげく見られた顔じゃありませんでした。写真を見せたら母親や叔母に大笑いされた(苦笑)
しかし、この装束を購入したと聞いて、さすが芸能人は違うと感心。買ったんだ………。いったいいくらしたんでしょう。芸能人の結婚式というとドレスや高島田が多いなかで、神式で十二単という趣向はいいですね。
テレビでは重さは12だったか、15キロとか言っていたのですが、これでも歩くからと軽くなっているんでしょうねえ。私、京都で着たときには、とてもではないですが一人では立てなくて介添えが要りました。歩くなんて到底無理(笑)。
袿の重ね方も一領ずつではなく、五領まとめて重ねる着方になってますね。単はこれ何色だろう。梔子でしょうか。
歩かねばならないため、袴は短くて、赤い靴をはいていますが、このぽっくりみたいな赤い靴、なんか可愛いです。
何かの資料で、昔の十二単は軽かったというのを読んだのですが、何の資料だったのか思い出せません。というのも昔の蚕は品種改良されていなくて、いまの蚕よりずっと糸が細かったんだそうで。元の糸が細いから、その集大成である衣も当然今よりも軽いということらしいです。
昔は裳唐衣で正装して結婚というわけではないですから、章子ではなく彰子が裳唐衣を着ることは、もう一生ないんでしょうねえ。本当に裳着が最初で最後だったのか。
追記。スポーツ新聞の一面に、でっかく写真が載ってました。さすが新聞。ネットとは大違いで、ゆっくり堪能できました。
単は幸菱、表着は立涌に又木形(?)、唐衣は赤色亀甲地に向蝶丸でした。お値段は二人合わせて一千万ほどだとか。うーん、さすが。
神将の順番
徐々に巻数を追うごとに2、3人と登場し、天狐編で全員が顔を揃えた十二神将ですが、
初セリフ時
初容姿描写(たぶんこれを以て正式なお披露目)
昌浩との初対面
彰子との初対面
全部ばらばらなんですよね(笑)
特に彰子はまだ全員と対面していないので、原作時系列にそって二次創作を書こうと思ったら、うっかりそのときではまだ対面していない神将とかがいたりします。
一度きちんと調べてデータにしようと思って読みながら付箋はってたことがあったんですが、あんまりややこしいんで、結局どうにもなりませんでした(笑)
それでも彰子と神将の対面って、ざっと読む限り、残すところあとは天空と紅蓮(太裳も?)だけなんですよね。彰子が式盤の名前と神将の顔を照らしあわせ始めたら、もっくんの正体ばれるような気がします(何気に彰子は2巻の時点でしっかり紅蓮目撃してるんだよね/笑)。
天空とも紅蓮とも、たぶん一生会うことなさそうですが(笑)
かなり自信はないですが、対面の順番は天一、玄武、六合、朱雀、(青龍?/未確定)、太陰、勾陳。で、異界で晴明瀕死の混乱時に白虎、天后、青龍と顔を合わせているのかな。太裳は声だけっぽいなー。
ネットって素晴らしい
日本の端にいて、大日本史料も御堂関白記も小右記も見られるようになったんですから、何て良い時代になったんだろうと思います。数年前まで、研究生でもないただのミーハーがどうやったらこれを拝むことができるだろうかと考えていました。専門書は高いし、図書館でわざわざ取り寄せてもらうのもめんどかったし国会図書館にまで行くほどではなかったし。たかだかミーハーなので、そこまでするほどじゃなかった(^^;)
でも【違えた星〜】の話を書く前に、古記録がウェブ上で見られるって知っていれば、妙なこだわり出した私が彰子と威子が生まれた日の十干十二支を割り出すのに1時間近くかけなくてすんだのになあ………(笑)
しかもいま確認してみたら、威子はあってたけど、彰子の間違ってた(吐血) まあ、もともと誕生日自体が架空設定だから間違ってたって支障はないんですが………。実際の12月23日、彰子の妹が生まれた日は、肝心の道長パパの日記は前後10日近く思いっ切り真っ白です、おーいパパー?(笑)
そうそう、この御堂関白記、来年(2008)上野の国立博物館で特別展をやるんですよね。
私は、日付見ないで年内にやるものだとばかり思い切り勘違いして、11月に東京に行くから絶対見る!とか意気込んでたんですが、そうだよね、いま国立は「大徳川展」やってるもんね………。当然それが終わって年明けてからだよね……_| ̄|○
御堂関白記だけじゃなくて、行成さんの書いた直筆のお経、道長パパが御嶽詣をして実際に奉納して埋めた経筒とかも展示されるそうです。み、見たい……。大徳川展の源氏物語絵巻も見たいけど、この「宮廷のみやび展」も見たいよー(泣)
御堂関白記は本当に珍しく、写本でなく道長の自筆本が残っている日記です。千年前に、実際に藤原道長が手にしていた紙と、そこに書かれている本人の字。もちろん暦は陰陽寮が作成したものです。紙も墨も千年も前のもので、東三条殿や土御門殿の文机の上なんかにぽんと置かれていたかもしれない。そんなものが、応仁の乱も明治維新も第二次世界大戦も全部乗り越えてまだ残っていて、私たちの目の前に展示されるって、本当にすごいことだと思います。千年という時間を考えただけで泣きそうになる。
私が、なるべく史実に忠実に、史実の隙間を縫うような少年陰陽師を書きたいなあと思うのは、「実は史実に残らなかった、残さなかっただけで、昌浩は千年前、本当にいたのかもしれないね」って。そう思えるような楽しみ方をしたいからです。結城さんがあれだけ丁寧に史実のキャラクターを作中に配してくださっているので(しかも現代版まで書いて時間を今現在までつなげることまでされている)、それを生かしたこういう二次創作もありかなあと思ったのでした。
来年1月2日〜2月24日まで東京上野の国立博物館。
見に行ける人はぜひ見に行ってほしいです。紙に毛筆で読めない漢字が書かれてるだけで、地味と言えば地味ですけどね(笑)
ご冥福をお祈りします
06/14/2008
涙が止まりません。まだ信じたくないです。まだ早い。本当に早すぎる。
「なんて素敵にジャパネスク」はまだ漫画が連載してるのに。
この方の書かれた古代や平安時代を舞台にしたたくさんの素敵な作品は、いつも私を夢中にさせてくれました。平安時代をまだ書きなれていなくて創作に四苦八苦していたころ、パソコンの隣りにあったのは「なんて素敵にジャパネスク」でした。
「なんて素敵にジャパネスク」は「あさきゆめみし」と並んで平安時代が好きな人にはずせない作品だと思います。私は「ざ・ちぇんじ」と「ヤマトタケル」が特に好き。何より「ざ・ちぇんじ」。古典の原作をここまでおもしろく、ここまで楽しくジュブナイルにできるのかと、原作を読んだときに心底感心しました。アレンジの仕方が秀逸で、あまりにすばらしかった。いまでも、原作の「とりかえばや」よりおもしろいと私は断言します。漫画版がさらにまた素晴らしい。
「ざ・ちぇんじ」「なんて素敵にジャパネスク」「銀の海金の大地」「ヤマトタケル」、上巻が出たきりの「碧の迷宮」。「銀の海金の大地」は生前笑って「未完の大作」などと仰っておりましたが、本当に未完のままで逝ってしまわれました………。真秀と真澄にはもう会えないのですね。雑誌コバルトの平安時代特集で、以前書かれた短編を再録され、インタビューに答えておられたのが私にとって氷室さんをお見かけした最後になってしまいました。
本当に早すぎる………。
瑠璃姫を、綺羅を、真秀を、真澄を、ありがとうございます。あなたの作品が大好きでした。ご冥福を心からお祈りします。
諸感想
(ブログに書いていた各新刊に対するつれづれ書きまとめ)
●ザ・ビーンズ「若晴明話1話目」
非常に長兄成親さんを彷彿とさせるのですが、この御方(笑)
こんな脳天気な人がああなるわけですから、何だかなあって感じです。そりゃじい様も大後悔だよ。
他にも、ああ、結城さんは葵祭をこう書くのかーとか、この姫が若菜さんなのかなー橘氏ってあたりが意味深だなーとか、姫御前かー姫御前かー(笑)とか、色々思ったのですが、なかでも納得したのが「ああ、やっぱり下った順番があるのね」ということ。
「理まといて〜」を書くときに、神将はどういう順番で昌浩のもとに下ったんだろうということを考えていたので、やっぱりじい様のときにも順番があったのね〜と、何となく嬉しい思いをしました(笑)
晴明のときに最後に下った紅蓮は、昌浩のときはいちばん最初に下りそうですね(笑)
ちなみにその後は詳しい順番は考えていませんが、おそらく六合、玄武、太陰、天一と朱雀あたりが第一グループ。そのあとに白虎に太裳。で、最終グループあたりが勾陳、天后、青龍、天空ではないかと勝手に想像して楽しんでいます。勾陳は絶対わざと後の方まで残りそう(笑)
それはともかく、今回の新連載で、いちばんツボにはまったのが誰であろう数行しか出てこない晴明のお父上でございました。名前は出てきていませんが、おそらく「保名」さんか「益材」さんでしょう。たった数行の文章から溢れでてくるあまりの浮世離れっぷりに撃沈。最高………!
すばらしすぎます。この人、晶霞さんとどんな夫婦生活送ってたんだろう。考えるだけで楽しくて悶えます。うわあ、意外なところに意外なツボが。作中に登場しないかなしてくれないかな………結城さんお願いします!(こら)。
コバルト文庫のほうの保名パパも好きですが(新刊でました嬉しい!)、きっとここの保名さんも素敵な人だよ!!(笑)
●「数多の虞をぬぐい去れ」
ザ・ビーンズのページに、新刊に冥官登場って書いてあるのが非常に気になるのですが。………まさか、本気で「澱」が今回のラスボスなのでしょうか?
実は発売前にかなり色々考えました。玉依編のタマヨリは皇統の祖になる「タマヨリヒメ」のことなのか、それとも「魂依り」で「誰かに何かの魂が依りつく」からタマヨリなのか。この時の斎宮は誰なのかとか(ちなみに恭子女王です)、そういえば皇后定子の母親は高階氏だったなーとか。いろいろとつらつらと。
さて、感想。
来た! 来た来た来た!
某掲示板風に叫びたいぐらいです。来たよ来た! いいね青いねたまらない! いい男になれよ昌浩!(笑)
一度折れても綺麗に接げると前より強くなるんだよ骨とかは(笑)
いままでは「いい男」じゃなくて、「いい男の子」だったんですよねー。風音編のときのあの一種傲慢な選択は、まだ子どもで純粋だったから出来たこと。いまの昌浩には、無理とは言わないけど、たぶん気が狂うほど悩むだろうと思います。
21巻目にして初めてぎくしゃくしている彼と彼女に、読んでいるこちらはにやにや笑いが止まりません。このまま行くのかなこの二人はー、と思っていた矢先にいいパンチがきました。そうだよねー、色々あれこれ気を揉まないとねー。お互いエゴから相手を選んでるんですから、悩まないと嘘ですよねー。あー、楽しい(笑)
ただ、悩んでいることがことだけに、吹っ切れたらものすごいことになりそうな気がするんですけれど。朱雀のように境界線の向こう側に行っちゃうのか(むしろあの突き抜けぶりだと字はイっちゃう……)、踏みとどまるのか。
昨日更新したばかりの未来話「君がため〜」とすでにもう思いきり齟齬が出てるんですが、どうしたらいいんでしょうか。いやもうどうしようもないのでこのままいきますが。
新刊出る前に完結させとくんだったなぁ(苦笑)
●「愁いの波に揺れ惑え」
何ておいしいところでおいしい一言を冥官………!(仰け反り)
そうだよ、彼しか言えないよ。身内が口にできないとなったら、枠外の立ち位置で、しかも有無を言わせぬ力のある部外者にしか、こういうぐっさりくることは言えない。ひとつところに執着しすぎると人は鬼になるんだよ。がんばれ昌浩。そしてこんなことがあると本当に昌浩は冥官に頭があがらなくなりそうだ(笑)
いやあ、しかし何ておいしい。
俺じゃ守れない。逆に危険な目に遭わせる
私がいると彼を傷つける。足手まとい
↓
そして距離を置く。というこの定番というか王道が………! テーブルばんばん叩きたい(悶)
今回の巻を読んで、玉依編は「返し縫い」だなと思いました。裁縫の返し縫いみたいに、話全体が揺り返しながらちょっとずつ前に進んでいくという感じ。個人的に今回の玉依編は、窮奇編の続編だなあという印象です。もちろんその間の十数巻のなかで語られて得てきた設定や成長があってここまで来た話だとは思いますが、窮奇編以降、動きのなかった昌浩と彰子の関係が動きだして、その伏線がそれこそ窮奇編含めた全巻をさかのぼって回収されているため、ああ、窮奇編の続きだなと。だから返し縫い。
私、まさか結城さんがここまで突っこんで掘り下げてくると思わなかったので、玉依編に入ってからの昌浩の凹みっぷりが面白くて楽しくてしょうがないのですが(酷)、ただ人気投票とかでも昌浩首位転落したし、こういうのって商業誌ではあまり受けないのかなぁ。私とっても面白いんだけど。まあ、きっと最後には明るいラブが!と思っているから、こんな呑気にかまえてられるのかもしれませんけれども。
しかし、何か珍しい取り合わせの表紙だな? と思っていたら、この五人が冥官に神気を根こそぎ吸いとられた神将だということに読み終わって気づきました。いつもダウンしてる天一ではなくて朱雀が倒れるという珍しいシチュですよね。そして青龍と天后は揃ってダウン(笑)。今回は天后の出番を頑張って増やしたという感じです。どうも私あんまり天后が好きになれないのですが、かといって嫌いにはなれないんですよね、彼女。神将のなかでいちばん不器用なのは紅蓮をのぞけば彼女じゃないかなという気がします。
いつだったか、ザビで能力別、威力別に十二神将を4×3で並べた紹介表がありましたけど、あれを見て、「うわ」と思った記憶があります。オールマイティっていうのは、強みじゃなくて弱点です。どうしてもその能力に特化している専門には及ばない。使い勝手はいいけど、ここぞというときに踏ん張れない。そして少年陰陽師という作品は、常に戦闘がぎりっぎり(笑)。戦えるけど最弱、結界はれるけど結界専門の神将にはかなわないとなったら、ポテンシャル的に相当きついです。本人はとってもつらいだろうなーと思います。何か、全然違う話だけど「薔薇のマリア」のマリアローズ思いだした(笑)
ところで、脩子内親王。しっかり嵬と仲良しになっているのに思わず笑ってしまったんですが。しっかり嵬の言葉聞こえてるし。順応性高いなぁ、この姫宮。
京組と伊勢組、どういう組み分けになるのかな。京組は昌浩ともっくんは当然として、動けない神将5人も異界に残るよなきっと(笑)。伊勢組は、晴明でしょ、彰子でしょ、たぶん風音と六合で、そうなると嵬もだよな。なんかものすごい道中になりそうな気がするのは気のせいか?(笑)。天一とか玄武はどうするんだろ。
次巻のタイトル。インタールード的な巻なんだろうなあと思いますが、横たわれって、横たわれって………えーと、どなたがお倒れになるんでしょうかね? もうすでに神将五人ぶっ倒れてますが?
後書きで「玉依編のあとに〜と〜と〜があって、最終章は〜」って、あと4編もあるんですか……嬉しいけど、そんなに長いんだと思った。完結まで文庫四十巻とか……? そんな長いライトノベルってそうそうないぞ(笑)
●「刹那の静寂に横たわれ」
ザ・ビーンズのほうはその日のうちに読み終わって、露樹ママがいるとわかっていながら吉昌パパに本気で惚れそうになったんですけど(本気でこの人と結婚したくなったよ/笑)、新刊になかなか食指が動かなかった。
裏表紙のあらすじ読んで、あとがき読んで、次巻はもっと云々と書いてあるのを見て「うわあ(汗)」と思って、いっそ出揃うまで読むのやめようかとも考えたんですが、次がもっとならコレはいま読んでおかないと相当きついと思いなおしました。
読んで思った。この話は「少年陰陽師」なんだなあ………。
陰陽師の前にわざわざ「少年」ってついている意味がわかるような気がします。陰陽師ではなく、おそらく「少年」のほうにタイトルの重みがある。これはまぎれもなく少年の物語。
前巻で予想したとおり、中継ぎの巻でした。そして誰が横たわるんだと思っていたら昌浩でした(笑)。怪我したとき以外は23巻ずっと駆け抜けっぱなしの昌浩なので、ここらでいったん休むのもいいかと思われます。しかしまた天御中主神とはとんでもないところを出してきた………ひええ。
まあ、この巻の最大の感想はアレですが。
行 成 様 大 失 言 。
いまここで! 昌彰最大の危機を迎えているこのタイミングで行成さんにそれを言わせちゃうの結城さん!? 唸って強張ってるよ道長さん!?(汗) そして一条天皇も思い立ったが吉日とばかりの相当のムチャ振りだ!(笑)
状況の深刻さとあまりの心的負荷にキャパシティオーバーの昌浩ともっくんは伊勢行きのほうにばかり思考がいって、あっさりスルーしてますが、これは後々我に返って泡を食うと見た(笑)
それとも京に残っている成親さんが青い顔でフォローに走り回るんだろうか(笑)
脩子内親王が可愛くていじらしくて泣けてきます。史実を知ってるだけに、ああ、敦康親王と妹宮は……と思うと、ちょっと涙ぐんだ。大きくなってもずっと風音がそばにいてあげてほしいぐらい。
風音と彰子と姫宮にはもっと仲良くなってほしいなあ。昌浩には敏次がいるけど、彰子には同性の友人がいなくてちょっと寂しいよー。
そして昌親さんは尋常でない事態に巻きこまれても、しっかり昌浩の兄ですなあ。愛されてるなあ。
次巻は、京にいるはずの昌浩やもっくんが先回りしているので晴明や彰子が仰天するんだろうな(笑)。
●「迷いの路をたどりゆけ」
来月発売の新刊の、Amazonの内容紹介を見てのけぞった。
そうきたか………!(爆笑)←注意。笑うような内容ではありません。
さすが、さすが結城さん! 王道とベタをわかってらっしゃる!(笑) 外さない、この方ホント展開外さない! 大好きだ!!
次巻はもっと大変とおっしゃってたから、正直どうなるかと思っていたけど、こういうシチュは大歓迎だ! ものすごくモチベーションがあがったよ私!(笑)
これ絶対玉依編のラストあたりで燃える。超燃える。ものすごい身悶えしそうな予感がする!!
彰子のダメージ考えると我ながらひどい人だなあとは思うけど、こういうベッタベタなシチュエーションを各作家さんがどう料理するかっていうのが、すごく興味があるし、大好きなんだ。いちばん度肝抜かれたのはカオスレギオンの03だなー。あれは完全に予想外だった。
作中、昌浩ともっくんですでに似たシチュは一度展開されています。
結城さん、どう料理してくるかなー、わっくわく♪
表紙も今回はふわっとやわらかい紫で、何かきれいだなー。楽しみ。
●「彼方の時を見はるかせ」「嵐の剣を吹き降ろせ」
このあいだ、やっと玉依編を読み終わりました………何という体たらく。
しかも、いきなりとっかかることができず、別の平安物の短編を読み、さらに別の軽い平安物を読み、頭の中を平安時代に切り替えてからの取りかかり。………最近、文字を追うのがつらいです。どうしてだろう(汗)
そして本日、颯峰編を読了。読んでて、いっそ神将視点で昌浩を育てるゲームを作れるんじゃないかと思ってしまった。プリンセスメーカーならぬ陰陽師メーカー。晴明の後継者を育てろ! みたいな(笑)。
昌浩は、着実に本編の中で成長を遂げているキャラだなあと改めて実感しました。ラノベのキャラクターって、ある程度キャラクター性が固定されていて、作中で成長するにしてもそれがキャラクター性を食うほど大幅に伸びしろを見せることはあまりないような気がするだけに、しっかり書き込んでいる結城さんは、最初からそのつもりだったんだろうなあと。昌浩の成長を書きたかったのかなあと。だから「少年陰陽師」なのかなあと。
前々回あたりの感想で、『陰陽師ではなく、おそらく「少年」のほうにタイトルの重みがある。これはまぎれもなく少年の物語』と書いたのですが、玉依編は同時に「陰陽師の物語」でもあるなと読了して思いなおしました。陰陽師としての陰と陽のはざまに立つニュートラルさと、いままで光のほうにばかり身を置いていた昌浩の闇と、成長が見事に重なっていた。
まさしくこれは『少年陰陽師』という物語なんだなあと。
玉依編をいまごろ読了して思いました。
/入口/