Ria and Yuzuha's story:Third birthday 【Ultra soul】 .from Fire soul

 自分という個の存在を認識した瞬間というのは、まったく唐突なできごとだった。


 ―――自分たちの本質はことわりりつだ。
 定められた力に付随する理を律する存在。あるいは律そのもの。
 土が長い年月をかけて石になるのも、火が燃えるのも、風が吹くのも、すべては自分たちが力の律に則っているからだ。
 自分たち精霊にとってそれは当然のことであり、それが全てだった。ときたま、力在る言葉の介入によって律を変更させられることもあったが、そのときは新たな律に従うだけのことだった。
 自然の法則そのものが、自分たちの集合体といっても過言ではなかったが、そもそも自分たちにとって個の区別は曖昧なものだった。
 かといって、完全にひとつにまとまっているわけでもなかった。共有できるところはどこまでも共有できたが、できないところもあった。勝手に生まれたし、勝手に消滅した。
 自分は、たまたま生まれたばかりだった。
 たまたま生まれたばかりの精霊で、そして、たまたま精霊として消滅することができなくなった。
 気がつくと、自分は〈力〉から引き離されていた。その〈力〉の律である存在にもかかわらずだ。
 他の精霊と共有していた部分はわずかしか残されておらず、共有できない部分ばかりで自分が構成されていた。
 おまけに何かが混ざっていた。力在る言葉が力の律を変化させるときにふり撒く、理のない力のようだった。だいぶ後で、それは魔力という名前を持つものだと知った。
 魔力は強烈な意識を自分に流しこんできた。


 そして自分が自分自身の存在を認識した瞬間、ユズハという名前を与えられた。
 同じ力の精霊で、自分と違う精霊はオルハという名前をもらっていた。


 ―――全てはここから始まったのだ。