とにかくそーゆーワケで、フィリア・ノルンが余りモンの運命の糸を使い、アメリアとシグルドに新たな人生をプレゼントすべくややこしい事を喋りながらややこしい事を行おうとしていた。
「これがとりあえず、粗筋ですね」
カメラ目線でシルフィール・エイルの優しく告げる声が静かな部屋に響く。
「………粗筋って………」
ガウリイ・クラゲ(明らかに違う)が不思議そうに首を傾げたが。満場一致で無視することに可決した。
「だいじょーぶよ、ガウリイ。ここはめっさ盛り上がった所だから、この説明でも状況は的確に伝わっているはずよ」
リナ・フレイアは子供を諭す母親のようにそう言った。
確かにリナの言う通り、この箇所が多くの人の記憶にこびりついて離れない、所謂「感動のフィナーレ!」であるのは間違いない。だがしかし、あごんとゆー女は生きて行くために必要な物が色々と欠けている女なのは周知の事実。特に文章力とゆーものは無いに等しい。こんな女のこんな説明で何がわかるのか疑問だが、それはさておき。
謝っておいた方がいいだろう。
ここがどの箇所の再現なのかわからない方、ごめんなさい。
転生のシーンなんですけど。
などとゆー筆者の謝罪もどこ吹く風で、シルフィールがそっとアメリアの傍らへと歩み寄った。
その間にもフィリア・ノルン=ヴェルダンディの走査は着々と進んでいく。
どうやら、リナ達からのもう一つプレゼントであるセイルーンの王女への転生が完了に向かいつつあるようだ。
アメリアはもう言葉も出ない。
リナの、ガウリイの、シルフィールの、フィリアのそしてシグルドの優しい笑みが視界に滲む。
シルフィールがおごそかとさえ言える口調で口を開く。
「ヴェルダンディのフィリアさんの調整が終われば、この現在は崩れ、新たな過去から全てが再構成されます。アメリアさん………どうか幸せになって下さいね………」
後半は可愛いアメリア毒にやられ、おごそかどころかメロメロであった。
「シルフィールさん………」
アメリアは黒髪を振り振り、涙声で皆の顔を見渡した。
「私、どうしよう。こんなにまでしてもらって………。忘れたくないです。リナさん達のこと、忘れたくない!」
きゅぅぅぅんっ!
仔犬のよーな鳴き声が広間に反響する。
言うまでもない。ガウリイ以外の全員の胸が鳴ったのだ。
まさに胸キュンである。ってまんまやん。
因みにガウリイの胸キュンセンサーはリナ用の特注である。
「転生に記憶は持っていけません。まして、これから無かった事になるもうひとつの現在の記憶なんかは持っていてはいけません」
「わかってます。わかってますけど………」
桜のつぼみのような唇をきゅっと噛み、アメリアはうつむいた。
全員の視線が優しく愛らしい戦乙女へと注がれる。
「………転生………」
アメリアがぽつりとこぼしたその一言に、リナは微笑した。
「どーしたのよ、いきなし。事実確認でもしてんの?」
がばりっとアメリアが面を上げた。
「待って下さいっ! 私、転生したらどーなるんです !?」
「ど、どーなるって………別に?」
「どうなさったんです? 急に」
「何も変わらんさ。お前はお前のままだぜ?」
リナはやや面食らいながら。
シルフィールは少し眉をひそめ。
ガウリイは青い瞳を和ませながら、順に口を開いた。
「あのっ! 神格はどうなります !?」
「そりゃあ只の人間になるわけだし、んなモン無いわよ」
がくり、とその場にアメリアは膝を付いた。
ちょっと痛そうな音がしたが、膝の皿が割れた位であろう。陸上選手なら選手生命の危機、くらいの問題だ。
うなだれ黙り込むアメリアに全員は顔を合わせた。
「どうしたんだ、アメリア?」
シグルドがその顔を覗き込み、直ぐ様顔の筋肉を引きつらせた。
「……アメリア……?」
未だ信託の力を行使中のリナはその場から動けないでいる。
リナの視線を受けて、シルフィールはこくりとうなずくと、膝を付きシグルド同様にその顔をのぞき込む。
「アメリアさん !? どーなさったんです !?」
その途端、悲鳴じみた声を上げた。
「………? アメリア !?」
ガウリイが傍らに駆け寄り、その小さな顔を仰がせる。
「………うっ………?」
アメリアの顔を見たリナが小さく呻いたのだった。
その顔は幽鬼よろしく蒼白で、大きな瞳からは大粒の涙が果てしなく流れていた。
「なになになに !? どーしたってのよ !? 神格なんて関係ないでしょ !?」
「し……神格は………いーんで…ひっく………す……ぐすっ」
小さな子供のように、アメリアは泣きじゃくりながら言葉を発した。
「………何か気になることでも?」
包み込むような優しい声でシルフィールが尋ねる。
さすがは癒しの女神である。癒し系アイドル優香も顔負けである。そば人恐るるに足らず! 因みにうどん人は近鉄バッファローズの中村なのだが、野球を語らせたら筆者は止まらないので割愛する。
「うっ……はいぃぃ………」
「仰って下さい。私達でできる事ならば協力しますから」
「実は………」
細い肩を小刻みに震わせながら、アメリアは頭を上げて口を開く。
「私っ! 神気で銅貨を三枚も創ってなおかつそれを店のおばさんに渡したんですっ!」
決心の発言はだがしかし、静寂によって迎えられた。
ぜーいんその場で見事にすっ転んだのである。
ぴくぴくと軽く痙攣する皆を呆然と眺めやり、
「………やっぱり悪ですよね、それって」
自責の念に駆られるようにアメリアは沈痛な面持ちでそう呟いた。
「あ・・・あほかぁぁぁぁいっ !!」
がばりっと身を起こし開口一番、リナが叫ぶ。
「あ……あほじゃあありませんよっ!」
「あほじゃなかったらボケよっ!」
「どっちかって言うと突っ込みです!」
「………何の話をしてんだよ。お前ら」
ガウリイがジト汗を流しながら律儀に突っ込んだ。
「そんなお前も好きだ………」
シグルドが頬を赤らめつつ、アメリアにそう告げる。
「………シグルドさん………」
勿論、この時点ですでにシグルドの腕はアメリアの腰にまわっている。
「そーゆーのは転生後にお願いしますっ!」
シルフィールが顔を赤くして二人を引きはがす。その赤面の理由が恥ずかしさの為が怒りの為かは余人の知るところではない。因みにまだこの時点でフィリアは一言も口を利いていない。
どーにかしたいが、ヘタ打ちゃフィリア台詞無しかも、とゆー危惧を残しつつ話は終盤へ向かっていたのだった。
「とにかくっ! もーどうだっていーのよ! そんな事は!」
リナがアメリアを怒鳴りつける。
「そうは言いますけどっ!もしリナさんが人間で財布にあると思っていたお金銭が無かったらどーします !?」
負けじと声を荒らげるアメリア。
「うっ!」
痛いトコロを突かれたらしく、リナは小さく身じろいだ。
「そりゃお前。リナだったら大陸一つケシズミにしてるだろうさ」
朗らかにガウリイがありえそうな事を口にする。
秒殺でガウリイを床に沈めると、リナは再びアメリアと向き合った。
「じゃあどうすんのよっ! 転生やめるって言うの!?」
「それは嫌ですっ!」
「まぁまぁ二人共、落ち着いて下さい」
睨みあう二人の間に割って入る勇者・シルフィール。
そこへ、
「あ。そーいや俺も同僚のキールに金貸したままだったな」
ぽつり、とシグルドが呟く。
リナの耳がぴくりと反応する。
「なんですってぇぇ !? 貸した金は返してもらわないとっ!」
「ちょっとリナさん。話をややこしくしてどーするんです?」
「黙ってて、シルフィール!貸した金が返って来ないなんて神が許してもあたしが許さないわっ!」
「お前も神じゃあないか………」
いつの間にやら復活したガウリイが言葉をこぼす。
「はっ! そーね! だったら神もあたしも許さないってわけねっ!」
「あの〜〜〜……」
「だからリナさん。今、そーゆー話じゃあないでしょ?」
「いえっ! シルフィールさんっ! そーゆー話ですよ!」
「え〜と、皆さん〜〜?」
「俺的には別に返してもらわなくってもいいんだが」
「………じゃあ言うなよ………」
「あのですねぇ………実は………」
「何よ! フィリア! 今大事な話してんのよ!」
リナが振り返ったその先には。
赤茶の髪の女性が仁王立ちでたたずんでいた。
「………ルナさんが来てますよ?って言おうと思ったんですけど」
その場の空気が急速冷凍で凍ったのは言うまでもないだろう。
「んっふっふっふ。ダイジなハナシって何かしら? リナ?」
春の日差しを思わせる優しい声音であった。
だが。その目はまったく笑ってはいなかったが。
「いつまでも帰ってこないからシンパイしたわよ?」
「………ね……姉ちゃん………」
半泣きを通り越してマジ泣きのリナの声を遮るように、涼しいルナの声がアメリアに向けられた。
「そのことは私がどうにかしておくから。心配は無用よ」
「ルナさん………っ!」
アメリアが歓喜の表情でルナへと最敬礼をした。
「ありがとうございます !!!」
輝かしささえ感じる声をひとつ残して、アメリアとシグルドは新たな人生への門を開け放った。
そして。
「あの……姉ちゃん?」
弱々しいリナの声がへろへろと空気に乗ってルナへとたどり着く。
「うふっ! お仕置きフルコースをおごってあ・げ・る・わ」
満面の笑みと共にルナはリナを見据えそう宣言したのだった。
「いっっやああぁぁあぁぁぁぁぁっ !!」
リナの絶叫は遠くはヴァン神族の元まで届いたとか届かなかったとか。
―――合掌。
書き殴りの投稿でこれを読んだときの最初の叫びは「うにょわあああっ、忘れてたあああっ!」です(笑)
きれいさっぱり忘れてました銅貨3枚。ええもう、これ以上はないくらいにキレイさっぱりと(きっぱり)。っていうかアメリア、あんたミルクも買ってるじゃん(爆笑)。
盲点突かれて目からウロコが落ちてました(笑) ほんとにどうなったのかしら、あの銅貨。あ、でも再構築されたってことは焼き菓子買ってないことになるから、いいのか???(笑)
家のテーブルに生卵割られて半泣きだったシグルドの同僚の名前が、ここで判明いたしました。実はしっかりあの箇所、HPにアップするにあたって名前を加筆修正しております(笑)
あごん様は他にもゆえ様の『天空歌集』のパロディや、うちのオリキャラであるユズハと、ゆえ様とねんねこ様のオリキャラたちが共演するお話を書いています(^^)
ホントに桐生は幸せ者です。あごんさんありがとうございましたv
ちなみに、夢の共演のお話はスレパロのオリキャラたちが集うHP
『星光卍会本部』で読むことができます♪