帰る場所 (スプリング・アゲイン) 〔2〕
―――汝はここに何を捧ぐ―――
割りこんできた声は、唐突に問いを投げかけた。
(…………!?)
パニックを起こしかけたアメリアに反応して、周囲が目まぐるしく変化を遂げる。
周囲と思念に意識が押しつぶされそうだった。
―――汝の幸福は何ぞ―――
割りこんできた思念が、脳裏にこだまする。
(わたしの、幸せ………?)
そう考えた瞬間、世界が一変した。
今度は闇だった。
何もない、塗りつぶされたような暗闇。自分の体もなく、音も何もない、柔らかな漆黒。無限の広がりを感じる黒。
そのなかを不意に、『何か』がアメリアの横をかすめて飛んでいった。
咄嗟にそれを払いのけようとして、アメリアは子どもが手をふり回すように、闇雲に全感覚を解放してしまった。
あちこちで何かがたわんで弾ける気配がした。ふり回した手が周囲の物全てにぶつかるように、アメリアの挙動に合わせて何かが解放され、一斉に押し寄せてくる。
声にならない悲鳴があがった。
それは、無数の光景だった。
アルバムをめくるような光景全てに、彼女自身がいる。
時として傍にはゼルガディスがいたし、ユズハもいた。リナとガウリイがいることもあったし、姉と父親だったりもした。王宮だったり草原だったり小さな家の中だったり、場所も一定していない。
何ひとつとして同じモノはなく、それはすべて―――未来だった。
未来。
幾通りも幾通りも、彼女が思い描いて想像して、望んできた無数の未来。
思考の軌跡。願望。時として、こう在るかもしれないと考えてきた、アメリア自身の行き着く先――――
それが全部、アメリアにまとわりついてきた。
先を争うようにアメリアの思考に割りこんで、占拠しようとする。
―――ゼルガディスが少し照れくさげに笑っていて―――ユズハが首を傾げてきて―――リナと笑いながら話を―――姉と共に父親の戴冠式に―――
感覚をシャットアウトしようとして、果たせなかった。
(やめて………っ)
アメリアの思考と感情が飽和しかけたとき、それは一気に弾けて逃げていく。
そして世界はアメリアに、その体と五感を返してきた。
不意に戻ってきた足元の固い感触に、思わずアメリアはよろけて座りこんだ。
そう、座れた。
遺跡の石の床、壁。
弾かれたように顔を上げたそこは、通路ではなく部屋だった。
こんな場所は、遺跡のどこにもなかった。そもそも枝道すらなく、最後に見たのは行き止まりの通路だったというのに。
視線の先、部屋の奥の、壁に触れんばかりのところに祭壇と思しきものがある。
ゼルガディスとユズハの姿はない。
―――汝の未来にいまだ幸福なし―――
「 !? 」
祭壇から聞こえてきた声は、間違いなくアメリアの思念に割りこんできたものと同じだった。
―――汝の夢を捧ぐことあたわず―――
「………っ」
アメリアは血が出るほどに唇を噛んで立ち上がった。
「勝手に人の心を覗いたあげく、ふざけたこと言わないで………!」
幾つも幾つも思い描いてきた、自分の道の先にあるもの。
大切に大切に、不安と期待と共に抱きしめてきたもの。
それを勝手に………!
―――ここは夢喰いの祭壇なれば、汝の夢すなわち汝が幸を捧げずに何を捧ぐ―――
祭壇の言葉に、アメリアは目をみはった。
「幸せな未来を捧げる、その代償は何です !?」
どんな欲望だろうと、それは幸せになりたいから―――自分がいい思いをしたいからだ。
それは絶対なのに、それに代わる何があるというのだ。
―――代償は、汝の願いを叶える力―――
「そんなのおかしいです」
矛盾している。
皆、幸せを願って願いの成就を望むというのに。
石の祭壇から、ゆるやかに声が流れ出した。
―――捧げられるは現における、未だ知らぬ道なれば、汝は夢を忘れるのみ―――
「…………願いを叶える力を与えられる代わりに、その人は自分の幸せが何なのか忘れてしまうんですね」
拳を握りしめたまま、アメリアはうつむいた。
黒髪が流れ落ちて表情を隠す。
―――力を手にし変わることなく在れば、汝の新たな夢は、捧げた夢と自然同一のものとなろう―――
―――だが―――
―――汝、捧ぐ夢なし―――
淡々とした言葉が、アメリアの癇に障った。
「あれだけ人の心引っ掻きまわしといて何言ってるんですっ!」
―――ならば汝に問う。汝が捧ぐ夢はどれぞ―――
―――汝が幸福はどの道ぞ―――
「あ………」
祭壇の問いに答えようとして、アメリアは言葉に詰まった。
幸せになりたい。ごく普通にそう思う。
だけど、どれが、どの未来が自分の幸せかわからなかった。
自分は何を望んでいるのだろう?
どうなることを一番願っているのだろう?
唇が、ふるえるように言葉を紡いだ。
「わたしの、幸せは………ゼルガディスさんが元の体に戻ること」
―――否。それは汝が幸福にあらず―――
言ったそばから否定されて、アメリアの頭に血が上る。
「どうして !? そんなことなんかない!」
いつだってそれを願っているのに。
決して表には出さない彼が焦っているのも感じているから、祈るように探し続けているのに。
声は静かに否定して、続ける。
―――それは汝が幸福の条件にしか過ぎず。汝が夢の全てではあらず―――
アメリアは呆然と祭壇を見つめ返した。
幸福の条件?
そんなこと考えたこともなかった。
だって元の体に戻ることができたら、それで―――
「…………!」
声もなく立ちつくした。
それで、自分はどうしたいのだろう?
もし彼が元に戻れたとき、どうしたい?
何を望んで、何を願っている?
何を、彼に望む………?
―――汝はここに何を捧ぐ。汝が幸福は何ぞ―――
「わかりません………っ!」
アメリアの目から涙が溢れ出した。
「わかんないです、わかんないですっ! わかっても捧ぐ気なんか毛頭ないですけどっ。でも、そんなことわかるわけないじゃないですか! わたしだけ一方的に望めるわけないじゃないですか !!」
あの幾つもの未来。
なかには望んでいない、幸せじゃないものも幾つかある。
だけど切に望んでいるものも、事実それが自分の夢だと知っているものがあっても。
「怖くて、わかんないですっ。そのとき相手が、わたしがそう望んだせいで幸せじゃないかもしれないのに。そうしたらわたしだって幸せじゃなくなるのに! わたし欲張りですからっ、わたしだけの幸せなんて無いです。わたしも相手も幸せじゃなきゃ絶対イヤです! だから、わたしに聞いたってそんなことわかるわけないじゃないですか、バカっ!」
―――バ………!?―――
癇癪を起こしたアメリアに八つ当たりされて、祭壇の声は絶句している。
アメリアの手のひらが、思いっきり祭壇に叩きつけられた。一度感情が解放されると、もはやどこまでも止まらない。
「何だって人が悩んで気にしていることを突っこんで聞いてくるんですっ !?」
完全な言いがかりをつけられて、祭壇は今度こそ沈黙してしまった。
しばらく経ってから、なおも泣きじゃくっているアメリアに、祭壇が告げた。
―――汝等の夢、捧ぐことあたわず―――
「………汝等?」
怪訝に思ったアメリアの視線を白い影がよぎった。
部屋の隅に、気を失っているゼルガディスが現れていた。
「ゼルガディスさん !?」
慌てて涙を拭いて、傍に駆け寄った。
しかし、ユズハの姿はない。実体化していない。
「ユズハはどこです !?」
―――かの者、夢を捧ぐこと叶いし。かの者、未来に幸福あり―――
「 !? 」
ならば、ユズハはユズハの幸せを忘れてしまうのか。
まだ自我を得て間もない、ようやく育ったはずの幼い願いを。
「ダメですっ。ユズハを返して!」
―――されどかの者、すでに願い叶いし。かの者、現に幸福あり―――
「え………っ?」
祭壇の声はなおも続く。
部屋に、光が満ちあふれた。
―――かの者の夢、未来、願い、幸福、全て等しく同じもの。すでに満たされし者に、ここはさらなる永続を付することしかできぬ―――
―――捧ぐことあたわぬ汝等よ。願わくば全て満たされし時、再びここを訪れるを望む。我は夢喰いの祭壇ゆえ、それが我の糧なれば………―――
視界が、白く染まった。
「………リア。おい、アメリア!」
ゼルガディスの声にハッと顔をあげると、アメリアは自分が通路の壁にもたれるようにして座りこんでいるのがわかった。
ゼルガディスがその前にしゃがみこんで、アメリアの顔を覗きこんでいる。
「え………?」
周囲を見回すと、二人がいるのは部屋ではなく、狭い遺跡の通路。
そして、ユズハが急停止した行き止まりだった。そこでユズハがくーくー寝息を立てて寝転がっている。呼吸をしていないのに、どういう理屈で寝息を立てているのかは謎だが。
慌てて左右を見回しているアメリアの頬に気がついて、ゼルガディスが指をのばした。
「泣いていたのか?」
「えっ?」
言われて、アメリアは自分の頬がごわついていることに気づいた。
涙の乾いた跡。
「夢じゃない………」
あの祭壇は夢なんかではない。
再び涙が溢れ出してきて、アメリアはゼルガディスの胸に飛びこんだ。
いきなり抱きつかれて、ゼルガディスが慌てる。
「お、おい、アメリア !?」
「わたし………セイルーンへ帰ります………」
アメリアの言葉に、慌てて顔をあげさせようとしていたゼルガディスの動きが止まる。
細く溜め息が聞こえて、頭をそっと抱きこまれた。
「………そうか………」
「そこで、あなたを待っててもいいですか?」
「……………」
重ねてアメリアは訊いた。
「『セイルーン』で、あなたを待っててもいいですか………?」
怖くて、ずっと言うことができなかった。
セイルーンにいる自分のところに帰ってくる。本当にゼルガディスはそれでいいのか。
わからなかった。
そう望むことは、彼にとって苦痛ではないのか。負担ではないのか。
ゆるやかに刻は過ぎゆきて、すでに一年。
帰城のときが近いことを、二人とも無言のまま悟っていた。
このまま別れることはできなくて。このまま別れずにいることもできない。
漠然としている未来は、彼とのものでなければいけないのだから。
だから、いまここで訪ねさせてほしい。
祭壇の声が、自分に迷いを突きつけたように。
自分の幸福が何なのか、確かめさせてほしい。
「ゼルガディスさんの、帰る場所……セイルーンのわたしでも、いいですか……?」
抱きしめてくるゼルガディスの腕に、力がこもった。
「………お前がいるなら、どこだってかまわない」
アメリアはぎゅっと目をつぶった。
夢喰いの祭壇に、いまなら言える。
何が自分の幸せか。何が自分の夢なのか。
たった今この瞬間から、胸をはって言うことができる。
「帰ってきてくれますか………?」
「ああ………待っててくれるか?」
「はい………」
ゆっくりと伏せていた顔をあげ、ゼルガディスの首に腕をからめて抱きついた。
「待ってます。待ってますから、帰ってきてください。わたしのところに」
ささやかれた言葉にアメリアは強くうなずいて、目を閉じた。
未来はおそろしく不確定で危うく、ただ約束を忘れないようにキスをくり返した。
強く、信じて。
「…………なんちゅう遺跡だ」
行き止まりの壁に書かれてあった文字を読み終わったゼルガディスが、ぼそっとそう呟いた。
その後ろでは、すっかり忘れられていてぶーたれているユズハと、それを必死でなだめているアメリアがいる。
「帰るぞ」
ゼルガディスが声をかけると、アメリアが「あっ」と声をあげた。
「そういえば、村の人がいませんよ」
「一本道の通路ですれ違わなくて、行き止まりにもいないんだ。入れ違いで村に帰ったか、帰る途中で行き倒れているかのどちらかだ。どっちにしろ、ここにもう用はない」
「結局、ここは何なんですか?」
「あれ、ばっ君」
「は?」
「獏だから、ばっ君」
「変な命名をするんじゃない」
ゼルガディスが乱暴にユズハの頭に帽子をかぶせた。
「結局、アレがどういった存在なのかは書いてなかった。ただ、ここに祀った経緯が書かれてあっただけだ」
見境なしに幸福な夢を喰われてソレを忘れて、いきなり各々好きな力を手に入れられても困るので、数人の神官が協力してここに祀り、その後は挑戦者のみがここを訪れるようになった―――そう言った内容が古い言葉で壁に刻まれていた。
『食べ物の代わりにお願いきいてあげるよん』ということだろうか。得られる力は原理もひどく曖昧だが、魔力や体力、知力など、自らを高める力を手に入れることができるらしい。どこまで本当かは怪しい話ではあるが。
どうやら好き嫌いも激しいようで、祭壇の前に立った者に明確な未来のヴィジョンがなければ、アメリアのように門前払いをくらうのだろう。
ちなみにゼルガディスは、アメリアがどんなに訪ねても、門前払いを喰らったのか、自分で断ったのか、断固として教えようとはしなかった。
「何か………微妙なモノ食べてる生き物ですね………」
アメリアが困惑した表情で、呟いた。
「それはどうでもいいが………ところでユズハ、お前魔力増えてないか?」
さっき目覚めてからというもの、ユズハの気配が微妙に違うのだ。
遺跡に入る前よりも若干、発する気が強くなっているような気がする。
ユズハがあっさりうなずいた。
「ン、増えた。ばっ君がくれタ。体を保つの、ずいぶん楽になっタ」
「はっ !?」
「もらった !?」
耳の覆いの先に付いている陶器の飾り玉をいじりながら、ユズハは無邪気に続けた。
「何かネ、おいしかったから、ありがトウって、くれタ」
「………………」
幸福な夢がすでに叶っている者は、何も喰われないと思ったのだが、どうやら違うらしい。喰われるが、忘れないというところか。もし叶っている夢を忘れてしまったら、現実の記憶も確実に消えているだろう。
ゼルガディスが、心底嫌そうな顔をして言った。
「すでに満たされし者に、ここはさらなる永続を…………。おい、ユズハ、お前何を願ったんだ」
「ばっ君にあげたモノ?」
「そうだ。お前の幸せとやらだ」
何の気負いもてらいもなく、ユズハはさらりと告げた。
「ばっ君にどうしたいっテ、きかれたから、りあとずっと一緒にいたいっテ、ゆっタ。ついでに、ぜる、とも」
それはすでに叶っている願いの延長でしかない。こうしてユズハはここにいるのだから。
すでに満たされし願い=一番おいしいご飯を食べさせてもらったお礼に、一緒にいるために必要な魔力を割り増ししてもらったと、そういうことだろうか。
「ゆずは、ずっとりあと一緒いたい」
「ユズハ………」
たまらなくなって、アメリアは隣りを浮いているユズハを捕まえて抱きしめる。
ゼルガディスは憮然とした表情で呟いた。
「俺はついでか……ま、引っ付かれるよりは断然こっちのほうがいいが………」
「ン、ついで。だっテ、りあは、ゆずはノなの」
「………………」
断定したユズハに、ゼルガディスが無言で圧力をかける。
半年過ぎて、いまここでようやく自分が争いの原因であることに気づいたアメリアが、腕のなかのユズハを抱えて、引きつった笑いを浮かべた。
「え、と、じゃ、二人のということで………ダメですか?」
『ダメ(だ)』
二人の声がきれいにハモった。
結局、捜していた二人は入れ違いで村に帰ってきていたことがわかり、面倒をかけたということでゼルガディスたちは予定されていた報酬をそのまま受けとった。
そしてそれから街道に添って旅を続けて、ひと月。
ユズハに、手が差し伸べられた。
左に、半ば手袋に包まれたゼルガディスの手。
右に、アミュレットのない、アメリアの手。
雪は溶け去り、こぼれるように花が開いて溢れ、それに包まれて野はその色を変える。
ユズハにとっては、初めての春。
「選んでください、ユズハ」
春の風がアメリアの髪を揺らして、舞わせる。
「元に戻りたいのなら、ゼルガディスさんと。そうでないのなら、わたしと一緒にセイルーンへ行きましょう」
差し出された手を見つめて、ユズハは首を傾げた。帽子の飾り玉の下についた朱の房飾りがさらさら揺れて、その頬にかかる。
「どうして? りあとぜるは、一緒にいナイの?」
滅多に笑わない人形のような無表情とは裏腹に、心底不思議そうなその声。
ゼルガディスは何も言わなかった。アメリアが、少し困った顔でユズハを見おろす。
「しばらくの間、一緒にいられないんです。でも、また一緒になりますから」
―――だから、ユズハは選んでください。
そう告げられて、ユズハはジッと二人を見上げた。
ゼルガディスを。次に、アメリアを。
「いたいのに、いナイの?」
「ええ………いたいけど、いないんです」
風にさらわれて消えそうな声だった。
ユズハの手が、アメリアの手をきゅっと握った。
「ゆずはは、りあと一緒にイル」
「ユズハ………」
「もう、精霊に還りたくナイ。りあとぜると一緒にいて、色んなこと知った。食べること、泣くこと、怒ること、声に出して歌ウこと。願ウことに、祈ること。雪に触った。水にも触った。みんなスキ、もっと知りタイ。もっと、りあといタイ」
幼い少女の姿をとった炎の精霊は、そう言って元に戻ることを拒んだ。
「だから、りあと一緒にイル」
アメリアとゼルガディスは、軽くうなずいて、顔を見合わせた。
泣きたくなるほど美しい春。
もう少しだけ時が過ぎて、伸びきった若葉が浅い緑とそれに透ける陽光を散らす、春の終わりと夏の始めになれば、それが二人の再会した季節。
アメリアが、髪をかきあげてゼルガディスに見せた。
風に揺れる、銀と瑠璃。
銀線細工のカゴのなかで、小さな瑠璃が揺れている。
「もう片方………」
ゼルガディスの視線に、アメリアは首をふった。
「渡さないでください。いまは、渡さないで………」
街道を通る人はなかった。
ゼルガディスが静かにフードを後ろに落とす。落とした途端、髪が風にさらわれて宙を舞う。
しゃらしゃらと微かに音がした。
「必ず戻る」
返事をしようとして、唇から嗚咽がこぼれそうになる。
慌てて、口を引き結んでうなずいた。何度も。
「………待って……ます、から………」
アメリアは口元を手で押さえた。
ダメだ。どうしても言いたいことがある。もう少し、もう少しだけ。
泣いてはいけない。
肩をふるわせて立ちつくすアメリアを、ゼルガディスが抱きよせる。
アメリアは大きく深呼吸をして、手で涙を拭った。ゼルガディスから少しだけ体を離すと、彼を見上げて笑った。
「帰ってくるの……待ってます……だから、いってらっしゃい………」
「………いってくる………」
ゼルガディスの腕が、再びアメリアを抱きしめた。
春と幸福の再来を願って。
ありったけの想いを。
この腕の中の、少女に――――

