Ria and Yuzuha's story:Third birthday 【Ultra soul】 .from Fire soul
世界の片隅で生きている、ユズハという自分を認識した。
そのことで精霊たちと自分が同じ存在だとは思えなくなったので、それがどうしてなのか、ひとつひとつ、どこが違うのか見つけてみた。
見つける、という行為はとてもおもしろかった。見つけたことを考えるのもおもしろかった。
自分ではない他の誰かの存在を意識した。
そのことで世界と自分のあいだに距離が生まれたが、融けあえないことを苦痛と思わなくなっていた。
文字を覚えた。
言葉を表す、という行為を知った。
それさえ知っていれば、自分ではない別の存在に触れなくても情報は入ってくるのだと知って、とても不思議だった。
手にとった本で自分の何かが広がった。
その感情を盛る器である言葉を、自分はまだ知らない。自分の内側の感情に名前をつけていくのも、おもしろいことだった。
『好き』な存在も増えた。
『りあ』は色々なことを教えてくれたが、いまや自分の存在を支えるようになった魔力が圧迫されて、すり減っていくのだけは如何ともし難かった。
それでも『りあ』と一緒にいるのは楽しかった。
毎日、何かしら新しいことがあり、知らないことを知って、刻々と自分は変わっていった。
もはや変わるということは自分自身の一部であり、水の流れのような時間の中に身を浸すことに、何のためらいも覚えなくなった。
もっぱら興味は外へと向けられていたが、ときどき自分自身のことを考えてみることがあった。
焔はまだ慕わしいものとして、自分とつながっていた。
魔力はよく馴染んだ気配として、どこにいてもその流れと密度がわかるようになっていた。ときどきその流れを追って精神世界を覗いてみることもあった。精霊界に似ていたがどこかが決定的に違うその世界で、自分とよく似ているがどこか在りようが違うものの存在を感じることもあった。何だか漠然とイヤだなと思ったので近寄らなかった―――後でそれには『魔族』という名前があることを知った。
世界を構成するものすべて、どんな小さなものでも、ひとつひとつに名前があって、そのことを知るのがおもしろかった。
色々なことを感じて、考えた。
思考する自分という意識はいったいどこにあるのだろうとも思ったが、あまり深くは考えなかった。
ある日、唐突にすとんと理解したことがある。
世界に在る存在として、決定的に自分はひとりなのだということを。
以前はオルハがいたが、オルハがいなくなったいま、同じ存在はもうどこにもいないのだと理解した。
自分はどこまで存在し続けることができるのだろう?
そう思いはしたが、それを淋しいとも怖いとも感じなかった。
ただ、在って在ることを知っていた。
消えることが怖いことなのだは思わなかった。