Ria and Yuzuha's story:Third birthday 【Ultra soul】 .from Fire soul
時間はどんどん経った。
そのあいだに色々なことがあった。
旅に出たりもしたし、親しく言葉を交わす存在も増えた。
ユズハという名前を持った自分という存在は、どんどん変わっていく。
少しも変わらないと周囲からは言われたので、それは表だった変化ではなかったのだろう。
言葉に関してはよく怒られたが、どのへんがおかしいのかよくわからなかったので、放っておいた。
存在を維持する魔力はどんどん削れていった。そのぶん色々なところで摂取していたが、水が漏る器のように入れた先から無くなっていった。いつかそれが尽きる日がきたとき自分は消えてしまうのだと、わかってはいたが、だからといって何とかしようとも思わなかった。まあ、足りなければ消えるのは当たり前だろうと納得していた。
そんな自分のことより、周りのほうがいまは大事だった。
『誕生』という現象を見た。
何もないところから、何かが生まれるということ。生み出せるということ。
世界に在るたいていの生きている者は『生み出す』ことができるのだと知った。
どうして何もないところから生きている存在が生まれるのか、いくら考えてもわからなかったので、そのうち考えることをやめた。もともと、ひとつのことを深くずっと考えるのは苦手だった。
『生まれた』者は『成長』するのだということも、知った。
こっちのほうはよくわかった。
自分が変わっていくことと同じコトなのだと理解した。
そうして生き物は成長して、変わっていって、また生きているものを生み出して、そして消えていってしまう。その生み出されたものも、変わっていって、また違う生きているものを生み出して、消えていく。
それはある意味、精霊で在ったときの発生と消滅に似てなくもなかったが、どこか根本的に違っていた。
どこが違うのだろう?
どうしてそういうふうに、連綿と時間に添って、繋がって、変わっていくのだろう。
自分のように変わりながらも、ずっと存在し続けるものがいないのはどうしてだろう。
いつのまにか、わからないことは自分で勝手に考えるようになっていた。質問はあまりしなくなっていた。
以前、己の存在が世界にただ一人きりと理解したときと同じように、この問いもやはりストンとある日、唐突に理解した。
これが世界なのだ。
世界というものはそういうもので、巡り巡って、生まれて死んでその間に徐々に変りながら、どこかに向かっているのだろう。
向かうところはなんとなくわかった。己の奥底が知っていた。多分、この世界のあらゆる存在の根底に刻まれて、皆が何も言わずともわかっているのだろうと思った。
そして、自分自身も世界の一部なのだ。
自分と世界。存在するのはただそれのみ。
世界が変われば、自分も変わる。
自分が変われば、世界も変わる。
他の存在とは違って、自分は新しく何かを生み出すこともないし、いつ消えてしまうかもわからなかったが、それでも生きて世界の一部となっていることだけはわかった。
世界の流れにとりまかれ、ただ独り在ればいい。
そうやって生きていけばいい。
世界の全てに名前を見つけ、世界の全てと相対しながら、思うように生きていく。
生きていくということは、いつか死ぬということも理解した。死ぬというのは消えること。
自分はいつか魔力が尽きれば消えるのだろう。
やはり、そのことをなんとも思わなかった。
けれど一緒に遊んでくれた猫が消えるのを見て、今度は泣かなかったが、前にオルハが消えたときと同じ気持ちになった。
同じ名前だからかと思った。
哀しい。
消えるのは―――哀しいこと。
消えた存在が哀しいのではなく、それを見ていた消えなかった存在が哀しくなる。
ならば、いつか消えていくとき自分は哀しくない。だれも見ていなければ、他に『哀しい』も増えない。
とりあえず、そう理解した。
『くーん』に怒られるまでは、そう思っていた。