いつもの彼ら―――いつものこと

 野宿のときは、交代で火の番をすることになっている。
 順番はたいていガウリイ、リナ、ゼルガディス、アメリアの順だった。これもいつの間にか自然にできあがっていたルールだ。ときおり順番が前後することもあるが、たいていリナは真ん中あたりで、アメリアはいちばん最初かいちばん最後であることが多い。
 ―――夜半。
 枕元に立った気配に、ゼルガディスは目を覚ました。知った気配なのでそれほど緊張はしないが、寝たふりを続けたくなる相手だった。
 だが、相手がそれを許すはずもない。無言のまま枕元に仁王立ちされ、ゼルガディスは舌打ちした。まったく、これではやることがどこぞの幽霊と変わらない。
 しかたなく目を開けると、完璧に装備をととのえたリナと目があう。
 確認終了。ゼルガディスは無言で目を閉じると寝返りを打って背を向けた。途端に、怒りの爪先蹴りが背中に飛んでくる。―――いや、音をたてないよう勢いは殺してあるので、正確には踏まれている。
 心底憂鬱な溜息をついて、ゼルガディスは起きあがった。
 火は赤々と燃えている。ガウリイとアメリアはそれぞれの場所で寝息をたてていて、目覚める気配はない。
「………交代にはまだ少々早いと思うが?」
「ま、そう固いこと言わずに。ゼルちゃんお願い」
「このために昼間、ルートを変更したな?」
「あ、バレた?」
 悪びれずリナが舌を出す。
 事前に町で仕入れた情報には、この近辺に盗賊団が出没するという噂もあった。ここ半年ほどは何の被害もないので余所にいったのだろうと住民たちは話していたが、リナとゼルガディスの判断は違った。
 抜け目のない盗賊団は、短期間では頻繁に仕事をしない。あまり派手に活動して領主などに目をつけられないよう、適当に間隔を空けて略奪をする。
 話を聞く限りでは、裏街道にはちょうど切り通しのような地形の難所があり、向こうが仕掛けてくるならそこだろうと四人は話し合っていたのだが―――
 目の前の女魔道士は、やられる前にやる気満々である。
 そもそも彼女の見張り順に真ん中あたりが多いのは、この盗賊殺し(ロバーズ・キラー)はひと寝入りしてから夜半に脱走し、何食わぬ顔でまた帰ってくるのを『いつものこと』としているからだ。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。ぱぱっと行ってちゃちゃっと戻ってくるし」
「………お前、魔族に目をつけられている自覚がないだろう」
「―――あるわよ?」
 リナがふっと笑った。闇を焦がす炎の光が赤みの強い双眸に映りこみ、一瞬何とも言えぬ光を宿す。
 思わず気圧されたゼルガディスが黙りこむと、それを了承と受けとったのか、リナはくるりと身をひるがえした。
「あとよろしくねー」
「っ、おい……… !?」
 ゼルガディスは舌打ちし、しばしの逡巡の後、とりあえずリナへの義理立てとして心のなかで三十、数をかぞえた。あとは知るか。リナへの義理は果たした。今度はガウリイだ。そのまま行かせたら恨まれる。
 こちらに背を向けて眠っている青年に声をかける。
「―――おい」
 すうっと呼吸が静まる。
 一拍おいて、ごろんと仰向けに寝返ったガウリイが、夜空に向かって肺が空になるような溜息を吐きだした。
「………ったく、おとなしく寝ていてくれんもんかなあ………」
 頼むから止めてくれよとは言ってこないあたり、自分の役割もゼルガディスの立ち位置もわかっているので、こちらとしても助かる。
 よっ、と腹筋だけで起きあがると、ガウリイは傍らの装備と剣を手に立ちあがった。
「ちょっと行ってくる」
「ああ、気をつけて行け」
 片手をあげて応え、光を弾く金髪はやがて木立の闇に溶けた。
 溜息をつき、ゼルガディスは炎に薪を足す。薪は寝入る前よりも量が増えていた。
 そのことに気づいて、ゼルガディスは顔をしかめる。
「あいつめ………」
 おおかた、ガウリイが気づいて追いかけてくることまで計算済みだったに違いない。普段は保護者を置いて脱走するのだが、今回はどうにか言いくるめて同伴させる気なのだろう。
 自覚がある、というのはそういう意味か。
 リナとガウリイが野営地を離れた場合、寝ているアメリアひとりを残してゼルガディスが薪を拾いに行くわけにはいかない。この薪はそういうことだ。
 ゼルガディスが相手のしたたかさに舌打ちしていると、ふいに少し離れたところで、くしゅんと小さなくしゃみが聞こえた。
 目をやれば、眠っているアメリアが無意識にか、寒そうに火の傍ににじり寄るところだった。その仕草に、彼自身も呼吸のたびに気道を通りぬけていく外気の冷たさをあらためて自覚する。
 たしかに野宿にはそろそろ向かない季節だ。遺跡探索を決めた際、こんな時期に野宿をしなければならないことに対して、人一倍寒がりのリナはぶつぶつと文句を言っていた。明け方にはもっと冷えこむだろう。
「このまま寝転がって火に突っこむなよ………」
 くしゅん、とまた聞こえる。
 ゼルガディスは立ちあがるとたき火を回りこみ、リナがたたんでいった毛布をとりあげた。寒がりの彼女らしく、金のかかった質の良い毛布だ。薄くて軽いわりには保温性が高い。
 どうせあの二人は当分戻るまい。戻るころには見張りの交代時刻でアメリアは起きだすし、寝入るリナとて毛布が暖かいほうがいいだろう。
 毛布をもう一枚、上からかけてやると、ゼルガディスは元の位置に座りなおした。
 夜の静寂をぬって遠くから爆音が聞こえた。
 くしゃみはもう聞こえなかった。


「―――なんでそんなところにいるんだ?」
 太い木の枝に腰掛けていたリナは、保護者の問いかけに対してぺろりと舌を出した。
「あら、やっぱり気づかれた?」
「お前さんの気配は目立つんだよ。特にこんな静かな山のなかだとな」
 ガウリイの答えを聞きながら、リナは枝の上でぶらぶらと足を揺らした。ブーツが闇夜にぼんやりと白く浮かぶが、ただそれだけだ。光源は木立の切れ間から射しこむ星明かりだけで、ほとんど視界はきかない。
 それでいて、その闇のなかを、明かりを消して樹上で息を潜めていたリナを発見するのだから、相変わらず非常識な勘だった。
 いっこうに悪びれないリナを見あげ、ガウリイがひとつ溜息をつく。
「で、どうしてオレを待っていたんだ? このまま戻る気になったのか?」
「まっさか〜」
 リナは鼻で笑って、ガウリイを見おろした。わずかな明かりをとらえて輝く淡い金。
「一緒に行きましょ。ついてきてくれるわよね、保護者さん?」
「お前なあ………」
 顔をしかめるガウリイの前に降り立つと、リナはくるりと背を向けて歩きだした。彼がついてくることを疑いもしない。
「おい待てよ、リナ」
「やだ」
 一言のもとにはねつけ、リナは腰のショート・ソードをひき抜くと呪文を唱えた。刀身にごく弱い明かりを生みだし、それで足下を照らしながら先を行く。
「ちょっと考えてみてよね、ガウリイ」
「何をだよ?」
「どうせあのまま裏街道通っても、明日には盗賊さんたちの襲撃に遭っていたかもしんないのよ? もちろん、あたしたちなら撃退するのは簡単でしょうけど、街道で襲われたって、その場でおたから巻きあげられるわけでもなし。単なる襲われ損よ。それなら襲われる前にこっちから不安の目はたたきつぶして、ついでにおたからもいただいたほうが、一石二鳥ですっきりするってもんしょーが。
 どうせ街道で撃退したって、ねぐらの場所を聞きだすことに変わりはないんだし♪」
「どっちにしても一緒だって言いたいのか?」
「そうよ。このあたりを拠点にしている盗賊団なんだし、もしかすると遺跡のことを知ってたり、そこから何か持ちだしているかもしれないから、街道で襲われなくたって殴りこみかける予定だったし。
 ―――五日間のうち、やつらのアジトにいつ行くか。ただそれだけの違いよ」
 ちらりと後ろをふり返り、リナは意志をこめて相手を流し見た。
「それが、たまたま今日で。たまたまあたしは、あんたを待つ気になったの。これもまた、それだけの話」
 妥協しろ、と暗に告げる。
 初日にしたのは、連日の野宿による後々の体力の低下を考えての安全策。そして、ここで彼をわざわざ待っていただけでも、自分としてはかなりの譲歩だ。
「こんな美少女が一緒に行こうって言ってんのよ。女の子の誘いを断るわけ?」
「美少女とやらが盗賊いじめに男を誘うのかよ?」
「嫌ならいいのよ。あたしひとりで行ってくるから」
 それを聞いて、ガウリイが嫌そうに息を吐くのが聞こえた。そこに不承不承の納得を感じとり、リナは唇の端を持ちあげる。
 彼が納得してついてきてくれるなら、これほど心強いことはない。
 背中を預けて戦えるというのは大きい。
 しばらく無言で歩いていると、ふとガウリイが不思議そうに口を開いた。
「………いまから行く遺跡に関係があることなら、なんでゼルやアメリアにも相談しないんだ?」
 遺跡に関する情報や遺物の取りこぼしを示唆すれば、ゼルガディスは間違いなくリナに賛成して、行動を共にしただろう。そうなれば、ガウリイが反対してもリナが望むとおりに、状況がなしくずしに盗賊いじめに流れた可能性は高い。
 それなのに、リナはいつも通りだれにも話さず、ガウリイだけを待っていた。
 リナはぴたりと足を止めた。
「決まってるじゃない」
 ふり返ってガウリイにぴっと指を突きつける。
 そんなこともわからないのかと言いたげな、それでいてきらきらと挑戦的に楽しげに輝く瞳がガウリイを見つめる。
 さも当然とばかりの答え。
「―――おたからの分け前が減るからよ」


 リナとガウリイが戻ってきたのは、ゼルガディスがそろそろアメリアを起こさねばと思いはじめたころだった。
「たっだいまー」
 炎の輪のなかに足を踏み入れたリナが、ゼルガディスに向かって小さな革袋を投げる。
 とっさにそれを受けとり目で問うと、ショルダーガードを外しながらあっさりとリナが答える。
「見張りを代わってくれたお礼」
「………そりゃどうも」
 何やらごまかされた気分になりつつも、ゼルガディスは深く追及しないことにした。いいかげん、彼も眠い。
「あの遺跡ね、手つかずなんだって。あいつらにはどうにも扉が開けられなかったみたいね」
 あくび混じりにリナが言い、マントと剣帯を外す。さすがに気の抜けた様子で、疲れた顔だった。マントからは、布にしては少々重たげな音がした。実入りは上々のようで、けっこうなことである。
 乱れた栗色の髪をかきあげつつ、リナは己の毛布を捜してあたりを見まわした。やがて眠たげな真紅が呆れた顔でゼルガディスを睨む。
「あんたね〜」
「別にいいだろう。くしゃみばかり連発されると聞いてるこちらも寒い」
「はいはい優しいわね〜。うう寒っ、あたしの毛布返してもらうわよ」
 アメリアから毛布を引っぺがそうと、リナがゼルガディスの前を横切る。空気が動き、炎が揺れた。
 流れる空気に混じる、戦闘の残り香。
 薪が燃える焦げ臭さとはまた違う、呪文の炎によりすべてのものが焼ける独特の匂い。
 栗色の髪がやたらふわふわと長いこともあるのだろう、リナは特にその匂いを強くまとう。己が放つ呪文の爆風に乱れた髪が風にたなびくと、そこからはいつも炎の呪文の匂いがした。ともにいるガウリイもそうだ。同じ匂いをまとっていることが多い
 いまでは、リナからその匂いが漂うことにすっかり慣れてしまい、嗅ぐと逆に彼女を喚起する。もはやリナを象徴する匂いといってもよかった。
「んじゃ、おやすみ〜。ガウリイ、ゼル。アメリア起こして、あんたたちもさっさと寝なさいよ」
 マントと毛布にくるまって、リナは早々に寝息をたてはじめた。
 ガウリイが何とも言えない風情で息を吐くと、頭をかいて眠るリナを見つめる。
 何となくそこから視線をそらし、ゼルガディスは受けとった革袋の中身を手のひらにあけてみた。
 そこそこの宝石が五つと、金貨が一枚。
 一枚だけ入っている金貨に気を惹かれ、手にとって炎にかざす。
「………レティディウスの六紡星金貨か」
 少々驚いて、ゼルガディスは呟いた。
 いくぶん磨り減った金貨の表面に、数百年前に栄華を誇った公国の紋が朱い光を弾いて影を生む。
 レティディウス時代の金貨は好事家のあいだで高値で取引される珍品だが、通常刻まれている星は五紡星だ。六紡星の金貨は、かの国に慶事があったときだけ発行されたと言われており、さらに希少性が高い。一部のマニアのあいだでは、幸運のお守りとされているほどらしい。―――不死の研究が原因で滅んだ王国の貨幣に、幸運もへったくれもないと思うのだが。
 見張り代なら、一緒に入っている宝石だけで充分だった。
 リナはいったいどういうつもりで、一枚だけこれを入れたのか。
「―――それ、何かお守りなんだってな」
 顔をあげると、リナの隣りに腰を下ろしたガウリイが毛布を手にこちらを見ていた。
「せっかくだからゼルにやると言ってたぞ」
「意味がわからん」
「災い転じて粘り勝ち、だそうだ。オレにもよくわからんが、もらっとけよ。お守りなら悪いもんじゃないだろ」
 あくびをひとつしてガウリイは笑い、眠っているリナの髪をくしゃりと撫でると、おやすみと告げた。リナとゼルガディス、どちらに対して挨拶したのかはわからない。きっと両方にだろう。
 すぐに寝息が深く一定のものになるのを感じながら、ゼルガディスは金貨を指で弾いた。朱金の光がくるくると回る。
 たしかに、魔族に目をつけられるのも、合成獣の体にされるのも、とんだ災いには違いないだろうが―――
 ………まあ、くれるというならもらっておこうか。
 革袋を懐にしまいこむと、ゼルガディスはたき火に薪を足した。
 やがて新しい薪を炎が抱きこみ、ぱちぱちと勢いよく火の粉が爆ぜる。音に反応して、アメリアが小さく身動きした。覚醒が近い。
「―――アメリア、起きろ。そろそろ交代だ」
 ほどなく目を覚ました少女が、だれよりも早い朝の挨拶をしながら起きあがる。それに対して就寝を告げる奇妙さに首を傾げつつ、ゼルガディスはマントにくるまると目を閉じた。
 彼女が火の番をする時刻は、いちばん闇が深いころだ。朝を迎える直前のまったき暗さ。だがすぐに払拭されていく暗がり。
 シンと深い闇のなか、どこかで気の早い鳥が一声鳴いた。


 あたりがうっすらと明るくなるころ、四人は起きだした。
 案の定いちばん寝穢かったのは、いちばん体力がないくせに盗賊いじめなどをやっていたリナだが、その彼女もぶつぶつ言いながら起きあがり、水場に行くと顔を洗う。
「う〜っ、寒いっ。この時期に野宿なんてするもんじゃないわよホントに」
 濡れた布で髪を拭い、櫛を通すと、リナはバンダナを巻きなおし、外していたイヤリングを身につけた。金具の冷たさに身ぶるいし、早々に装備をととのえる。
 昨夜、マントの隠しに放りこんでいたおたからの類は荷物の底の方に移し替え、手袋をはめ、剣を佩く。
 火をのけているアメリアの横で、ガウリイが地面を掘りおこしていた。ゼルガディスはといえば、荷物のなかから干し肉と乾燥果実をとりだし、食べる分をとりわけている。
 灰と土まみれの葉を幾枚もとりのぞき、真っ白な布を開くと、無発酵のパンがほこほこした湯気とともに顔を出した。穀物と香草の甘い匂い。
 早くから起きていたアメリアのお腹がぐう、と鳴る。リナにからかわれて赤面し、それから少し拗ねた顔になった。
 水で薄めたワインと干し肉と乾燥果実とパン。それぞれ出立の準備をしながら、口を動かす。
「リナさん、これ美味しいです〜。また作ってください」
 天才美少女魔道士謹製のパンをいたくお気に召したらしく、アメリアが幸せそうな顔でパンを食べていた。
 ブナの実の香ばしい歯ごたえと、そこからにじみでて生地にしみこんだ油とラードのコク。小麦特有の甘さとからんだそこに、ときおり香草のほろ苦い風味が混じる。
 無発酵のため舌触りは悪いのだが、焼きたてと空腹に勝る調味料なし。
 四人分の生地をこねたといっても、一人あたりの量などたかが知れている。あっという間に食べ終わったリナが、呆れた顔でアメリアを見た。
「あのねえ、そうそう都合良くブナの実がたくさん手に入るわけないじゃない」
「クルミでもいいじゃないですか。今度宿で作ってくださいよ。これも覚えますから」
「まったく、あんたときたら………」
 リナは苦笑したが、じゃあ今度、とアメリアに約束した。
 順次食べ終わり、それぞれ荷物を持って立ちあがる。ガウリイとゼルガディスが各自の水袋や水筒に水を満たしに行っているあいだに、リナとアメリアは火の始末をした。
「あ、そーだ。アメリア、これあげるわ」
 火が完全に消えたかどうか確認していたアメリアは、リナからピンッと弾かれたものを慌てて両手でキャッチした。
 木立の隙間から射しこんできた黎明を受けて、六紡星を刻まれた金貨が鮮やかに光る。
「え、リナさん。何ですこれ」
「レティディウスの六紡星金貨。ものすっごいレアで、好事家のあいだでは幸運のお守りって言われてんのよ?」
「どうしてそれをわたしに? ………リナさん、何たくらんでるんですか?」
「ほっほーう。人の厚意を疑うワケね、アメリアは?」
 ひくり、とこめかみをひき攣らせた年上の少女に、アメリアは慌てて首をぶんぶん横にふった。
「いいいいいえっ、ありがたく受けとらせていただきますデスっ!」
「ならよろしい。ほら、とっとと行くわよ!」
 話はそれで終わりとばかりに、リナは男二人と合流すべくさっさと歩きだした。
 その小柄な背中を見送って、アメリアは手のひらの丸い金色に視線を落とした。
 ………幸運のお守り。
 アメリアの巫女としての勘が告げる、リナが関わる大きな流れ。
 果たして吉と出るか、凶と出るか。コインの裏と表のように、幸福と災禍は常に背中合わせだ。
 見あげれば、梢の向こうにわずかに覗く空は、今日もよく晴れそうな気配を見せている。
 先ほど食べた朝食は、とても美味しかった―――。
 いまは、それさえわかっていればいいような気がした。
 だいじょうぶ、だいじょうぶ。きっと何とかなる。
 金貨をきゅっと握りしめて笑い、アメリアはリナの後を追って走りだした。