〈適当な用語解説〉(あくまで雰囲気をつかむためのものです)
※
添臥……そいぶし。文中で説明されている通り、帝、東宮、親王の元服の夜に姫君が添い寝をする儀式です。昔はほんとーに結婚していたそうなんですが、平安時代も下がってくると、ただ並んでおやすみなさい、だったそうです。「花と」は平安時代中期から後期の摂関時代全盛期+桐生的好みリミックスな設定なので、ここではただの添い寝です(^^;)
【コラム】平安時代の男子の成人……平安時代の男子は、10〜20歳くらいまでの間に、たらしていた髪をあげ、髷を作って冠をかぶる初冠の儀を得て成人しました。ただかぶって成人というわけにもいかず、きちんとかぶせる人も決め、日取りも陰陽師に占ってもらって吉日を決め、同時に位も授かります。
作中では書かれていませんが、もちろん香澄も桐耶もやりました。身分の高い子息であればあるほど、加冠役の人もそれなりの身分の人になります。光源氏は左大臣でしたね。父親は大変です。加冠役を探し、日取りを決め、コネを奔走して息子に位を与え……(笑)
※
麗景殿……れいけいでん。梨壺(昭陽舎)の西隣にある後宮の建物のひとつで、やはり天皇の奥さんが住まうところです。源氏物語では花散里のお姉さんにあたる人が住んでいます。雪宮が東宮と仲がいいのは、お互い近くに住んでいるせいもあるんでしょうかね。
※
妻戸(つまど)……寝殿造り建物の四隅にある、観音開き――外側に開く両開きの板戸です。普通はここから出入りしました。
※
葡萄葛……えびかづら。読んで時のごとくブドウです(爆)。野生種のヤマブドウだそうです。
※
師の宮……そちのみや。従三位に相当する官職。役職の名前そのものは「師」。福岡にある太宰府の最高責任者で、代々親王が勤めるのが約束事となっていたため、この役職の親王を師の宮と呼びました。また、任命されても福岡まで出向かないのも慣習となっており、実質的な現地での責任者は権の師か大弐と呼ばれるNO.2の者となります。太宰府に流罪となった菅原道真や源高明は権の師です。師の宮はほとんど名誉職ですが、この時代は位に付いているという事実が重要なのです。
※
弾正尹宮……だんじょういんのみや。従四位上に相当する官職。弾正台のNO.1の位で、こちらも親王が任ぜられることが多い職でした。弾正台は警察機構のような働きをするところだったんですが、検非違使が登場して以来、仕事を奪われて、こちらも形骸化していきます。だからやはり位に付いているという事実が以下同文。
※
親王宣下……しんのうせんげ。この子はちゃんと天皇の子どもですよ、っていう手続き。これがないうちは、例え天皇の子どもでも親王・内親王ではありません。嫡出の皇子、または嫡男の嫡出の皇子(=皇孫)、嫡出の皇女、または皇孫女子(=天皇の嫡男の嫡出の娘)のうち、親王・内親王宣下のあった人のことをこう呼びます。
と書くとややこしいですが、ようするに男子の場合、天皇の息子と、その子ども(天皇の孫)までは親王宣下を受ける資格がありますが、女子の場合、天皇の娘と、天皇の息子が設けた娘の場合のみその資格がありました。同じ天皇の孫でも、天皇の娘が産んだ娘にはその資格がありません。この宣下のない皇族子女は王、女王(にょおう)と呼ばれました。
咲姫の場合、皇族であるのは母方のほうなので、内親王宣下を受ける資格がなく、普通の姫君ということになります。
系図参照。また桔梗の母親の場合は、お父さんが親王ですが、お父さん自身が皇孫という資格で宣下を受けた場合、暁宮はすでに宣下の範囲外という可能性もあります。細かいことは決めてません(爆)